東京高等裁判所 昭和37年(ラ)648号 決定
抗告人は、戸籍上千葉県海上郡本銚子町一、四一四番地伊東松五郎、同すて間の長女として大正二年一二月五日出生し、大正三年九月一五日右松五郎の叔母である伊東はつと養子縁組をなし、大正九年四月七日離縁し、ついで同年七月三日本籍茨城県鹿島郡高松村大字国末六二番屋敷、村井丑松、同やすと養子縁組をなしたことになつているが、実際は、茨城県鹿島郡鹿島町泉川浜において加瀬金蔵と村井かね(明治二五年六月七日生、右村井丑松、同やす間の長女)間の長女として出生したものであり、同胞には弟喜一郎(明治三八年三月一〇日生)及び妹みさ(明治四二年五月一〇日生)があること、抗告人は、大正一二年二月頃本籍茨城県鹿島郡鹿島町大字国末二、六九四番地の四、段木清作と事実上の婚姻をし、大正一三年一月一八日長男栄造を生んだが、婚姻届出は昭和七年二月二八日になしたこと、以上の事実が認められる。右認定によれば、抗告人が戸籍上の記載の如く大正二年一二月五日生であるとすると、抗告人は実の弟妹よりも後に生れたことになり条理に反するし、又九才で事実上婚姻し、一〇才で長男を生んだことになり経験則上不合理であるから、抗告人の戸籍の出生月日に関する記載は明らかに誤りであるといわねばならない。
ところで、原審は、抗告人の戸籍の出生年月日に関する記載が誤りであることを認めながら、抗告人主張の日に出生したことを確認する証拠がないという一事により直ちに真の出生年月日を確認する証左なしとして本件申立を却下しているのであるが、性質上非訟事件に属する家事審判事件においては、必ずしも申立に拘束されず、家庭裁判所は合目的性を旨として必要もしくは適当と認める処分をなすべきであり、本件のような戸籍訂正事件において戸籍の記載に錯誤のあることが明らかになつた場合には、単に申立人の主張している事実を確認しうる証拠がないとの理由で申立を却下することなく、審理の結果、真実と認められるところがあればそれに従つて錯誤のある戸籍の記載の訂正を許可すべきである。しかるに、原審判はこれと異る見解の下に本件申立を却下したものであつて不当というべきであるから取消を免れない。
(菊池 川添 山田)